酒粕甘酒(さけかすあまざけ)は、日本酒を搾ったあとに残る「酒粕」を湯で溶き、砂糖を加えて甘みをつけた飲み物です。同じ「甘酒」と呼ばれていても、米麹甘酒とは原料も甘みの生まれ方も異なります。そして酒粕甘酒には、アルコールが含まれる可能性があります。

この記事では、原料である酒粕そのものの正体、基本的な作り方、そして飲む前に知っておきたいアルコールの扱いを、公的機関やメーカーの公表値をもとに整理します。

酒粕甘酒とは

酒粕甘酒は、日本酒づくりの過程で生まれる酒粕を原料にした甘酒です。酒粕を湯でふやかして溶かし、砂糖を加えて甘みを調整します。

原料は酒粕・水・砂糖

酒粕甘酒の基本の材料は、酒粕と水(湯)、そして砂糖の3つです。好みで少量の塩を加えることもあります。

甘みは加えた砂糖によるもの

米麹甘酒は、麹菌(こうじきん)のつくる酵素アミラーゼが米のデンプンを分解する「糖化」という働きによって、ブドウ糖などの甘みが生まれます。砂糖を加えなくても甘いのはこのためです。

一方、酒粕甘酒には糖化の工程がありません。酒粕だけでは甘酒としての甘さにならないため、砂糖を加えて甘みをつけるのが一般的です。同じ「甘酒」という名前でも、甘さの成り立ちがまったく違う点は押さえておきたいところです。米麹甘酒の糖化については米麹甘酒とはで詳しく説明しています。

味わいの特徴

酒粕甘酒は、酒粕由来の香りと、日本酒を思わせるコクのある風味が特徴です。とろみのある口当たりで、温めて飲まれることが多い飲み物です。同じ酒粕は粕汁や粕漬けにも使われており、料理で酒粕の風味に親しんでいる方には、なじみやすい味わいといえます。

原料の「酒粕」とは何か

日本酒を搾ったあとに残る固形分

日本酒は、米と米麹、水を発酵させた「もろみ」を搾ってつくります。このとき液体として取り出されるのが清酒(日本酒)で、搾りきれずに残る固形分が酒粕です。つまり酒粕は、日本酒づくりの副産物にあたります。

米や米麹の成分が残っているため、酒粕は粕汁や漬物、そして甘酒など、さまざまな料理に使われてきました。

酒粕にはいくつかの形状がある

酒粕は、搾り方やその後の扱いによって形状が変わります。酒造メーカーの月桂冠が公開している解説では、次のように整理されています。

種類特徴主な用途
板粕平たい板状。味はバラ粕と同じだが溶けにくい甘酒・粕汁など料理全般
バラ粕バラバラに崩れた状態で、板粕との違いは形状だけ甘酒・粕汁など料理全般
踏込粕タンクに入れて踏み込み、空気を抜いて圧縮しながら熟成させたもの奈良漬など粕漬けの床

甘酒に使うのは板粕やバラ粕です。月桂冠の解説によると、板粕とバラ粕の違いは形状だけで味は同じですが、板粕は溶けにくいため、水に漬ける時間を長めにとるか、ペースト状にしてから使うとよいとされています。踏込粕は熟成させて漬物の床に使うもので、甘酒には向きません。呼び名は地域やメーカーによって異なる場合があります。店頭で酒粕を選ぶときは、用途の表示を確かめると迷いにくくなります。

酒粕そのものの成分

文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年には、「酒かす」(食品番号17053)として成分値が収載されています。可食部100gあたりの主な値は次のとおりです。

成分100gあたり
エネルギー215kcal
たんぱく質14.9g
脂質1.5g
炭水化物23.8g
食物繊維総量5.2g
ビタミンB20.26mg
ビタミンB60.94mg
葉酸170μg
亜鉛2.3mg
アルコール8.2g

ここで大切なのは、これは原料である酒粕そのものの値であり、飲み物にした酒粕甘酒の値ではないという点です。実際の酒粕甘酒は、酒粕を水で薄めて砂糖を加えてつくります。100gあたりの数値は、薄め方や砂糖の量によって大きく変わります。

酒粕甘酒とアルコール

酒粕甘酒を飲む前に、もっとも確認しておきたいのがアルコールの扱いです。

原料の酒粕にはアルコールが残っている

上の成分表のとおり、酒粕には可食部100gあたり8.2gのアルコールが含まれます。日本酒を搾ったあとの固形分なので、お酒のアルコール分が残っているためです。

薄めても加熱しても、完全には抜けない

酒粕甘酒は、酒粕を水や湯で溶いて飲める状態にします。そのため、飲み物としてのアルコール濃度は原料の酒粕より低くなります。加熱によって一部は蒸発しますが、完全に抜けきるわけではありません。

家庭でつくる場合、使う酒粕の量、薄め方、加熱の程度によって濃度は変わります。一律の度数を示すことはできないため、手作りの酒粕甘酒は濃度が分からないものとして扱うのが安全です。

「アルコール分1%未満」は0%という意味ではない

市販の酒粕入り甘酒には、「アルコール分1%未満」と表示された商品があります。たとえば森永製菓の「甘酒190g」は、原材料が砂糖・酒粕・米麹・食塩/酸味料で、アルコール分1%未満と公表されています。この商品のように、酒粕と米麹の両方を使った製品もあります。

この表示は、酒税法の区分に対応しています。酒税法では、酒類をアルコール分1度(1%)以上の飲料と定義しています。さらに国税庁の通達では、水などを混ぜて薄めれば飲料にできるものも酒類に含めるとしたうえで、飲める程度まで薄めたときに1度未満になるものは除くとしています。酒粕を薄めてつくる酒粕甘酒が、酒類ではなく清涼飲料として売られているのは、この区分によるものと考えられます。

注意したいのは、1%未満は「酒類に当たらない」という区分であって、「アルコールを含まない」という意味ではないことです。通常アルコールを含まない米麹甘酒とは、事情が違います。なお、米麹甘酒についても「1%未満」という表現が使われることがありますが、こちらはアルコール発酵を行わないためで、事情が異なります。詳しくは米麹甘酒とはで説明しています。

市販品でアルコールの有無を確かめる方法

市販の甘酒は、パッケージを見れば種類とアルコールの扱いをある程度確認できます。確認したいのは次の3点です。

  1. 原材料名に「酒粕」があるか。記載があれば、アルコールを含む可能性があります。米麹だけが使われていれば米麹甘酒です。
  2. 「アルコール分1%未満」などの表示があるか。この表示があれば、微量でもアルコールを含むと考えて判断してください。
  3. 商品の区分。清涼飲料水として売られていても、アルコールが0%とは限りません。

表示が見当たらず判断できない場合は、販売者やメーカーに問い合わせるのが確実です。

次の方は注意してください

  • 酒粕甘酒、および酒粕を使った甘酒については、次の方は注意が必要です。
  • 子供
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 車や自転車を運転する前
  • アルコールに弱い体質の方

服薬中・通院中の方

アルコールを避けたい場合は、酒粕が使われていない米麹甘酒を選ぶ方法があります。神社や祭りで振る舞われる甘酒のように原材料が分からない場合は、どちらの甘酒か尋ねると確実です。体調や服薬などで不安がある場合は、医師や薬剤師にご相談ください。

酒粕甘酒の作り方(基本の流れ)

家庭でつくる場合の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 酒粕を小さくちぎり、水または湯に浸してやわらかくする(板粕は溶けにくいため、浸す時間を長めにとる)
  2. 弱火で加熱しながら、溶け残りがなくなるまで混ぜる
  3. 砂糖を加えて甘みを調整する(好みで少量の塩を加える)

分量は好みで調整できますが、酒粕を多くするほど味は濃くなり、アルコールの濃度も高くなります。前述のとおり、加熱してもアルコールは完全には抜けません。運転の予定がある日や、子供と一緒に飲む場面では、米麹甘酒を選ぶほうが安心です。

つくったものは冷蔵庫で保存し、早めに飲みきってください。清潔な器具を使い、異臭やカビ、いつもと違う酸味など気になる点があれば口にしないでください。

米麹甘酒との違い(要点)

酒粕甘酒と米麹甘酒の違いは、次の3点に整理できます。

  • 原料:酒粕甘酒は酒粕、米麹甘酒は米麹
  • 甘みの由来:酒粕甘酒は加えた砂糖、米麹甘酒は糖化によるブドウ糖など
  • アルコール:酒粕甘酒は含む可能性があり、米麹甘酒は基本的に含まない

味わいや向いている場面まで含めた詳しい比較は、甘酒の種類で解説しています。

まとめ

  • 酒粕甘酒は、日本酒を搾ったあとに残る酒粕を溶き、砂糖で甘みをつけた飲み物です。
  • 原料の酒粕には100gあたり8.2gのアルコールが含まれ、薄めても加熱しても完全には抜けません。
  • 「アルコール分1%未満」は酒類に当たらない区分を示すもので、0%を意味するものではありません。
  • 子供、妊娠中・授乳中の方、運転前、アルコールに弱い方は注意してください。

甘酒の種類ごとの違いは甘酒の種類、米麹甘酒については米麹甘酒とは、甘酒そのものの定義は甘酒とはで解説しています。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、効果・効能を保証するものではありません。健康状態やアレルギー、服薬、妊娠・授乳などで不安がある場合は、医師・管理栄養士等の専門家にご相談ください。

参考(出典)